シド・ミード展に行ってきた話。

先日、『シド・ミード展 PROGRESSIONS TYO 2019』に行ってきました。 日本での原画展の開催は34年ぶりとのこと。SFの世界に大きな影響を与えた”ビジュアル・フューチャリスト”と呼ばれ、映画好きなら知らぬ者はいないはず。「ブレード・ランナー」や「ターンAガンダム」などのデザインで有名ですね。その他多数の作品に参加されていますが、SF関連のお仕事に役立てようと、春の心地よい日差しの中、会場の3331アーツ千代田まで出向きました。

シド・ミード展のチケット画像

車やロボット、宇宙船などのユニークで先鋭的なデザインとそれらが存在する世界が、ガッシュを使った緻密な水彩画で描かれており、微妙なグラデーションや、光の反射、映り込みなどで様々な素材感が表現されていて、その高い技術に感服。

今なら未来的なデザインはほとんどCGで表現されるのでしょうが、やはり手描きのイラストにはソフトを使って描くCGでは表現できない個性を感じることができます。

展覧会では、スマホアプリをダウンロードして絵にかざせば、そのラフスケッチが見られるなどの仕掛けがあったり、映画関連作品以外はスマホ、タブレットでの撮影は許可されているなど時流を考慮した取り組みもありました。既知の作品も沢山あるので、ある程度許可をすることでSNSなどでの発信もしやすくなり集客にも繋がるのでしょうね。僕も最初は写真を撮っていたのですが、あとでパンフレットを買うつもりでしたし、自分の眼で観ることがおろそかになりそうだったので、途中でやめました。

シド・ミード展のカーデザイン画
かつてフォードで先鋭的なカーデザインに取り組んでいたとか。

シド・ミードは直接的には「YMATO2520」や「ターンAガンダム」などの作品で日本のアニメ界にも大きく関わっているのはご存じのとおり。どちらもその独創的なデザインが何かと話題になりました。作品のユニバースが既に構築されていて、松本零士先生のヤマト、大河原邦夫先生のガンダムのデザインがユーザーにインプットされている中で、なぜシド・ミードに?というのは関係者のみぞ知るということですが、もし既存の枠の中で新しいデザインを求めたとしたらそれは選ぶ人を間違っているし、ぶっ壊してリセットするくらいのつもりなら氏に依頼することは意味があったでしょう。

やっぱりユーザーが思うヤマトらしさ、ガンダムらしさから飛び越え過ぎると支持はされにくいのはいたしかたないですが、制作サイドの「一度はシド・ミードと仕事がしたい! 」そのクリエイティビティに触れたいという欲望は十分に理解できる所です。会場ではターンA制作時のやり取り、デザインのステップなども映像で公開されていました。例の「ヒゲ」デザインについては当時現場ではあまり話題にならなかったとか。マジで?と思いましたが(笑)。

シド・ミード展ターンAガンダムのイラスト
ターンAガンダム。ヒゲが衝撃的でしたね。日本人にはできないデザイン。

ターンA以外のガンダム作品もありましたね。制作年代をみるとガンダム劇場版の公開時期あたりだったのでその関連かもしれません。その他にも「ブレード・ランナー」のスピナーや「エイリアン2」のスラコ号、「スタートレック」「ショートサーキット」「トロン」などのSF映画作品も展示されていました。SF映画好きの僕としてはテンション↑な感じ。ちなみに映画関係の作品は撮影不可。

今度SF作品に関わるお話をいただいている中で、 丁度良いタイミングで展示会開催だったのでとても有意義なものでした。シド・ミードの作品のクリエイティビティに触れ、何だか久々に絵の具で絵を描きたいという衝動がわき起こるほどのインスパイアを受けましたね。その夜にはきっちり近未来SFの夢を見るという、自分の分かり易い単純さにややあきれましたが、まだ感受性は衰えていないということにしておくかと。昔H・R・ギーガーの画集を見て悪夢にうなされるという経験もあったし(笑)。

残念だったのは資料として購入予定だったパンフレットや画集が既に売り切れだったこと。4/27から開催で5/8時点で無くなるのはちょっと早すぎかなぁと。ちょうど開催期間の半分ですもんね。GW中にはけちゃったんでしょうけど、シド・ミードだったら購入率高いはずだから、もっと強気で作っておいていただきたかった。ぜひ再版を望む!

最後に。

展覧会1枚目の作品に

私はつねに作品を通じて、実現可能な未来の世界を人々に提示してきました。

想像力は私たちを未来へ前進させる燃料です。

だれもが楽しそうだと思う未来をつくるのは、

情熱と結びついた想像力であり、

それを人々が信じることで繁栄する

未来はつくられるのです。

シド・ミード

という文章がありました。

僕はかねがねアーティストとはその創造力で「新しい価値観を提案する人」だと思っていて、新しい文化をつくり発展していくことに貢献するからこそ価値があると考えているので、氏のその言葉にはとても感動します。今更ですがシド・ミードが一流のアーティストであることに思いを馳せた良い展覧会でした。

<2019.05.13追記>

シド・ミード展植田益朗実行委員長から嬉しい報告が。会期が2019.06.02まで延長され、SOLD OUTだった公式図録が新装版として通販で再版されるそうです。やったー!

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