マンガの単行本デザインのはなし

突然ですが、マンガの単行本のカバーデザイン、装丁の仕事が好きです。

今時は物として残らないデザインも沢山ありますが、単行本は実際に手に取ることができますし、昔から慣れしたしんだものなのでデザインの仕事の中でも特に好きなジャンルなのです。

ただ、実はデザイン的には自由度があんまり無い場合もあります。それは、まずカバーという限られたスペースへ必要な情報を入れなければならないこと。特に、背表紙は狭い中にいろいろ入れないといけませんし、変わったことがやりたくても大体同じになってしまったり。表4(カバー裏側)はバーコードやISBNコードなども入りますので、結構広いスペースが占有されます。

あともう一つは、依頼をいただいた時点でカバーの絵が進行していたり、完成していたりすることが多いというのがデザイン的にかなり制約を受けます。これがカバーのイラストですといって完成したイラストをいただくと、空きスペースにロゴ置いて、巻数を入れて、下は帯があるから隠れる部分は避けてとなると、必然的にやれることがあんまり無くなってしまうのです。主人公達が二人横に並んでいて、頭の上にスペース。なんてイラストだと、もうそこにロゴ入れるしかないという。

一方で、さまざまなマンガ単行本のカバーデザインを漁っていると、これは秀逸!新しいなぁと思う作品も沢山あります。そういった作品を分析していると、デザイナーのセンスはもちろん、そこに至る仕事の進め方が違うのではないかと感じます。これは、絵が上がってからだと絶対にできないデザインだなと。

思い切ったデザイン、新しいデザインを作ろうとすると、作家、編集者、デザイナーが意見やアイデアを出し合った上で、方向性を決め、それに合わせて作家が絵を描き、デザイナーが仕上げるというプロセスが必要になります。こんなのをやりたいと他作品を参考にしたり、ラフをそれぞれが作って持ち寄ってとか、もしくは三者のうち誰かがリードしてデザインプランを作ることもあるでしょう。

今では、僕自身もできるだけ先生に絵を描いていただく前に打ち合わせさせて欲しいということをお伝えしています。例えばこの作品。

僕の要望を聞き入れていただいて、高瀬先生と編集者の方と、絵を描いていただく前に一緒に打ち合わせをさせていただきました。当初はタイトルも、もっとロゴとして作るようなご要望でしたが、作品の内容や最近の流行なども含めて、採用された方向性や、左右に分けて2行に大きく入れるような案などもご提案し、イラストについても1巻と2巻でそれぞれ強弱をつけるなど、お話の中で固まっていったものです。

デザイン的にはそう冒険したものではないのですが、細かい処理違いなども入れると、A案×4バージョン、B案×4バージョン、C案×3バージョンを作りました。選択肢がある中で選んでいただけましたので、高瀬先生にも喜んでいただきました。

カバーデザイン、装丁の中でも実は「帯」はデザイナーの腕の見せ所だったりします。スペースは小さい、情報は多い、色数が限られる(大抵2色。カラーの場合もあります)。平積みされている所でぱっと目に飛び込み情報を伝える必要があるので、べたっと文字を並べてしまうと目立たない&分かりにくくなってしまいます。そのためキーになる文字(文章)と補足的な内容 を、主役、脇役と振り分けて視覚化していきます。2色の場合はベース色ともう一色の組み合わせ、白抜き、アミがけなどで上手く強弱を付けながらデザインするのがコツです。

以上、今回はざっとではありますが、マンガ単行本のカバーデザインについてつらつらと書きました。僕の仕事に対する考え方など、ご理解いただけると嬉しいです。今度は「帯」特集でもやってみましょうか。それではまた。

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