指定はゆるめの方がデザイン的な提案がいろいろできるのです。
今回は、レイアウトやデザインのラフ指定をいただいて、それに従ってデザインをするようなケースについて少しお話をします。
特にマンガ関連のお仕事の場合は、編集者からレイアウトなどの指示をいただき、それに沿って制作することが一般的。作家と我々デザイナーの間に立つ編集者は、本を作るためのクオリティコントロールをするお仕事なので、ここに画像を入れてコピーはここらあたりに、ロゴはここで・・・なんて感じで指示を出します。
それを元に我々は実際にデータを作っていくのですが、その内容は場合によって様々です。雑過ぎると意図が汲み取れませんし、細かく指定が入っていると、ちょっとインパクトのあるレイアウト、新しいアイデアなど、デザイナーのアイデアや感性を反映させることができず、そのまま組むだけになってしまうんですよね。
もちろん、指定通りに組まなければならない明らかな理由がある場合は別として、もし、デザイナーのデザインに期待する場合、絶対外して欲しくない要素だけ明確にしていただいて、あとはざっくりお任せというのが自由度があって良かったりします。
もちろん、編集者もプロなのでレイアウトは意図をもって組まれているのですが、デザイナーはさらにいろんなアイデアをもっている場合も多く、そこを引き出すには逆にざっくりが良いのです。
また、実際にデータとして組んでいった場合に、「あれ、この画像こういう比率で入らないけどな」とか、「ここにロゴ入れると絵を隠しちゃうな」とか、調整すべき部分も出てきたりもしますし、何より編集者は他にも色々とすべきことがあるのに、指定に時間を使っていただく方がもったいない。
以前、とある編集者の方から、「きっちり指定するのと、ざっくりとだったらどっちがいいですか?」と質問をいただいたことがありました。これは、僕が「指定レイアウトをベースにこちらで調整していいですか?」と聞いたことがあるからなのですが、僕は上記の理由で振り幅を持たせていただく方がありがたい派です。
その方いわく、「指定した通りにしかあげてこないデザイナーもいる」ともおっしゃっていましたが、個人的にはそれではデザイナーを使う意味が無いと思っています。デザイナーとしての提案がなければ、単にソフトを使える人だったり、自分じゃない他のデザイナーでもいいわけですから。
ざっくりがいいといっても、こんなケースは別です。ラフもなく指示は箇条書きの文章だけなのに、仕上げてからダメ出しを沢山いただいた事があります。実はデザイン的に許容範囲が少ないのに指定が雑という、そんなのできる訳ないでしょな場合です。
これは本当に困ります。指定のキャッチコピーをある程度目立つように入れたら、「コピーはぎりぎり読めるくらいで良くて、絵が目立つように修正してください」なんて言われたら、普通はそういう指定がないとそうは作りませんよ〜となってしまうのです。
こういった場合は手描きでいいのでラフを作ってもらい、「絵を見せたいのでキャッチコピーは小さく」という意図を教えてもらえれば、もっと簡単に意思の疎通ができるはずです。そして、こういうことはえてして納期に余裕が無い時ほど起こります。早く原稿渡さないとというあせりがあったりするんですよね。そして、もっと事態が切迫するという地獄状態になります。
デザイナーあるあるとしては、「お任せと言われて最後までお任せだったことは一度も無い」というのがあります。これは極端なケースですが、プロなんだから好きにやらせればいいものが上がってくるという過度な期待だったり、イメージを持っていないから事前に指示はできないけど、具体的になった時点であれこれ不満が出るというものです。
例えば、寿司屋に行って「お任せ」で注文した時、最初に「イカ」が出てきたとします。そこで、「俺、イカ好きじゃないんだよな」って言ったら職人さんに怒られますよね。だったら、任せるにしても事前に嫌いな物、好みのものくらいは伝えなければ。何度も通った店なら別ですが、食べたいネタが思った順番に出てきたら、その職人さんはエスパーです。
ということで、今回は「指定はゆるめの方がデザイン的な提案がいろいろできますが、明確に仕上がりのイメージがある場合はしっかりと指示が必要」というお話でした。編集者、発注者とデザイナーの相性もありますし、何度も仕事をしているうちにお互いのやり方が分かったり、これくらいのものは絶対上げてくるよなという信頼関係によっても変わったりはしますが、伝えないと分からないことと、プロにゆだねる部分のバランスのコントロールが上手いクライアントは本当に仕事がやりやすくて結果いいものが仕上がります。
もし、ラフ作るの苦手だからざっくりのままデザイナーに任せたいという方は、僕と相性がいいのでぜひお仕事ご依頼ください(笑)。