分かりやすさよりもひっかかりが大事な時もあるよ
よく、デザイン修正の際に「もっと見やすくしたい」「もっと読みやすくしたい」といわれることがあります。もちろんデザイナーなのでそこは注意しているのですが、修正項目としてはよく上がってくる部類です。特にキャッチコピーやロゴタイプなどの文字ものに多いかも。(文章が読みにくいというのはまた違う理由なので別の機会に)
では、なぜこういったことが起こるのかというと、「視認性がよい=理解しやすい」と考えるのと、その意味よりもまず強く「認知」されることを重視し、その後に「理解」されることでより「印象に残る」という認知性を重視する考え方との許容範囲の違いが原因ではないかなと思ったりします。
文字のデザインを例にとると、見やすく、読みやすいことを重視すれば、文字の基本的な形をできるだけ保つ方向となり特別な印象はなくなります。一方、デザイナーがデザインに強いインパクトを出そうとすると、ぎりぎりまで形を崩したり一部を強調したりして読みやすい元の形から離れていきます。そういったことをどこまで許容するかによって相違が出てしまうんですね。
もちろん、文字は読んではじめて意味が理解できるので、大抵の場合、読めないとアウトです。でも、僕は必ずしもそうだとは思っていません。何なら読めなくても「ひっかかればいい」と考えてデザインする時もあります。これは、もう「文字」として理解してもらうよりも、「形」として認識して欲しいという感じで。
キャッチコピーなどは、目に飛び込んできた瞬間にその意味で感情に訴えかけるのですが、逆に、見た瞬間に「!?」(強い印象)となるけど、よく分からないな。なんだこれ?となってから理解するために2度見する。というような仕掛けも時にはおもしろいと思うのです。
見やすい、読みやすいということは、視覚的には何のひっかかりもないので、目にとまらない可能性もありますし、読まれたとしても言葉が刺さらなければ印象には残りません。その逆に、一瞬では理解できないけど印象に残ることで頭の深いところに記憶されたり、意味よりも作品の世界観が視覚的に先に伝わるというようなこともあるので、僕としては視認性よりも、発見される、印象に残るということを重視して認知性を基準に判断すべきではないかなと思っています。
(もちろん、ケースによって見やすさを最重視すべき時もあります)
デザイナーはいつも既存の枠を飛び越えたいと思っているので、(人にもよるとは思いますが)攻めた表現を探していますし、それを確認する担当者は思い切ったデザインはリスクも伴い、後でエラい人に怒られるかもしれないですし、周囲を説得する必要があったりで、やはり保守的になりがちかもしれません。そういったことも、許容範囲に影響はするでしょう。
ボツになっても提案してこそクリエイター!
デザイン的に読みにくいという話とは少し異なりますが、ホラー系のマンガ単行本のデザインをした際、お話に土着文化が関連していたことから、巻数表記を「壱」「弐」と漢数字にしたのですが、3巻、4巻を「惨」「死」などとすれば、お話の怖さが伝わったり、タナに並んだ時の差別化に繋がるのでは!と思いつき提案してみたところ、やっぱり不採用〜(笑)。担当のみなさんにはウケていたみたいですが。。。
まあ、攻めれば失敗する可能性もあるので、いろいろな判断基準があって当然ですが、誰もが見やすい、分かり易いを目指しすぎると無難な方向に進んでしまうので、単純に分かりにくい=×ということではなく、時には「!?」という仕掛けを作るというのもクリエイティブの方法だと思います。
そういう遊び心みたいなものがその作品の面白さを表現することに繋がって良い効果を生むこともありますので、これからもボツを覚悟でギリギリを攻めたり、思いついたことは提案するというスタンスでデザインしていこうと思います。